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数納 広哉; 町田 昌彦
RIST News, (66), p.3 - 16, 2020/10
原子力発電所事故により環境中に放出され陸域に降着した放射性セシウムは、森林内において、地衣類や菌類等に蓄積・保持されることが知られている。特にキノコにおいては、その傘部分に放射性セシウムの濃縮が観察され、セシウムイオンは傘の色素分子と錯体を形成すると考えられている。本研究では、キノコ色素分子の代表例としてノルバジオンA分子に着目し、最新の量子化学計算手法を用いて、水溶液中でのアルカリ金属イオン錯体の分子構造と錯体形成におけるセシウムイオンに対する選択性(他のアルカリイオンとの錯体形成自由エネルギーの差)を評価した。その結果、アルカリ性の水溶液中で、ノルバジオンAはセシウムイオンと選択的に錯体を形成することが分かった。この計算結果は、キノコにおける放射性セシウム濃縮の謎を解く鍵になると考えられる。